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花咲か加湿器 あなたと・生きる

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父が最後まで心残りだと話していたのが、僕が今回探しにきた植物のことだ。むかし、父がこの国を訪れたときに発見し、おそらく新種だったが、諸般の事情から持ち帰ることができなかったという。滅多に見つからない上に、開花の条件もはっきりしない。しかし、その花は実に美しいものであったと、父の研究メモには書き記されている。

絶対に見つけてやると意気込んできたのに、この有様である。成果もあげられず、挙句の果てに遭難。生きて帰ることすらできないかもしれない。

 
前編はこちら↓
花咲か加湿器 幻の花を求めて
https://www.rentalism.jp/note/686/

 

 

岩で日陰になっているところを見つけて、僕は倒れ込んだ。まだ数時間しか歩いていないのにクタクタだ。頭がぼうっとする。呼吸が苦しく、足も痛い。こんな調子で街まで辿り着けるとは到底思えない。もうダメだ。無理だ。

絶望の中、視界の隅に何かがあるのに気づいた。そちらに視線を向けると、岩陰に何か生えている。今は植物どころではないというのに、僕は吸い寄せられるように、その小さな植物の元へと這って行った。胸ポケットから父の研究メモを取り出し、今まで何度も開いたそのページと見比べる。

「この葉の形状、特徴的な蕾……そんなまさか。いや、間違いない、見つけた!」

それは、僕が、父が、長年探し求めていた植物に違いなかった。

「おめでとうございマス! すゴイ! すゴイ!」

加湿器はランプをチカチカさせて喜びを表現した。その加湿器に僕は手を伸ばし、加湿機能をONにする。

「警告警告! 湿度が20%を下回……どうしたんでスカ?」

「この植物はある条件下でしか花を咲かせない。父さんの研究メモを元に僕が立てた仮説の一つが湿度だ。一定以上の湿度を保てば、花が咲く可能性がある。そのために、今回の調査にお前を連れ来た。」

「でも、飲み水がなくなってしまいマス。」

「……正直、このまま歩いたとしても街まで辿り着ける可能性は極めて低い。それなら、僕は最後にこの花を見たい。父さんがずっと探していた花を、一目でいいから見てみたいんだ。付き合ってくれるか?」

僕が覚悟を決めてそう尋ねると、加湿器は少し黙ってから返事をした。

「もちろんです。AIは『あなたと・いっしょ』の略ですカラ。」

加湿器は植物の隣で蒸気を出し続けた。僕はそれをじっと見つめていた。数時間経ったころ、ほんの少し、蕾が開いてきた。

「もうすぐだ、もうすぐ……。」

「水が残りわずかデス。」

「頼む、もう少し。」

給水ランプの点滅と、蕾を交互に見ながら、僕は祈った。

「警告警告! 給水してくだサイ!」

給水ランプが赤く灯るのと、ほぼ同時だった。小さな花が、ゆっくりゆっくり開いたのである。その花びらは目が醒めるような朱色で、生命力に溢れていた。なんて美しい花だろう。

 

 
「ありがとう、お前のおかげだよ。これでもう思い残すことはない。」

僕が力無くそう呟いた、そのときだった。遠くの空に何か見える。

「なんだ?」

近づいてくるものに目を凝らす。音も聞こえてきた。まさか、信じられない。ヘリコプターだ! 僕は思わず立ち上がった。

「おーい! 助けてくれー!」

全身で大きく手を振ると、ヘリコプターはこちらに向かってくるようだった。ああ、助かった。助かったんだ。僕はその場にへたり込んだ。

「よかった……。でも、どうしてここがわかったんだろう。」

「私にはGPSが搭載されており、それは加湿機能がONの状態のみ作動しマス。ついでに救難信号も出しておきまシタ。」

「GPS!? 救難信号!? そういう大事なことは早く言えよ!」

「OFFにしたのはあなたデス。」

「あーもう! でも、いいよ。おかげで助かった。」

僕がポンと白いボディに手を置くと、加湿器がまた少し溜めてから言った。

「AIは『あしたも・いきる』の略ですカラ。」

 
帰国した僕は、すぐに父親の仏壇に手を合わせた。そして鉢に植え替えた、朱色の花を持ち上げた。

「父さん、ちゃんと見つけたよ。」

写真にそう伝えると、笑顔の父が頷いてくれたような気がした。じわりと目に涙が滲む。
すると、背後からプシュー!と音がした。

「すみませんが、湿っぽいのはやめてくだサイ。」

「おまえが言うなよ。」

僕が笑うと、加湿器は返事をする代わりに、またブシューと蒸気を出した。

 
 
<完>
 
 

執筆者:ナガセローム(長瀬) Twitter note

=====
編集後記:
人にとっても、花にとっても、水は命。
そんな命の水を、すぐそばで提供してくれる加湿器。
お茶目なキャラクター性も可愛くて、こんな加湿器がいたら、ずっとずっと、一年中お部屋に置いておきたくなります。

お話にも花が咲きそうです^^

 
業務用加湿器のレンタルはこちら
https://www.rentalism-osaka.com/uruoi/

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